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PVCに代わる素材は、オレフィン材が以前から広く知られていた。
しかしオレフィン材の価格は、安くてもPVCの2倍。そこでプロジェクトチームは、オレフィン材を使った被覆部分を薄くし、コストを抑えようと考えた。ところが大きな課題に直面する。鉛フリーの開発時代から電線の研究に携わる佐藤は言う。
「振動や高熱にさらされる自動車用ワイヤーハーネスでは、高レベルな耐摩耗性と難燃性が求められる。ところが、被覆を薄くすると強度が低下します。さらに厄介なことに、オレフィン材は非常に燃えやすい。難燃性向上のために金属水酸化物を配合する方法がありましたが、十分な難燃性を持たせるだけの量を配合すると、今度は耐摩耗性が著しく低下する。従来品より薄く、なおかつ耐摩耗性と難燃性を両立した被覆を作るためのオレフィン材と金属水酸化物の配合比とは —。これを見つけ出すことが、重大なテーマになったのです」
実験した配合比は、数万パターンにも及んだ。気の遠くなるような作業から活路を見出せたのは、住友電工グループの総力を結集できたからだ。
「当時、プロジェクトに関わるグループ3社が月に2回は集まり、情報交換を行いました。他事業で開発した素材の情報や過去に取り扱った電線のノウハウを持ち寄っていたのです。その中で、『役立つのでは!』と思ったものには、実際の担当者にまで話を聞きに行きました。このプロセスなしに、ハロゲンフリー電線は誕生していなかったと思います」(吉本)
被覆の配合比を追求する一方で、導体そのものの細径化も進められた。
ここで採用したのは、撚られた導体を圧縮して断面積を小さくする、国際規格である ISO規格に準じた「圧縮導体構造」。
断面が円形である素線を撚ると、どうしても素線同士の間にすき間ができる。これが細径化の阻害要因だった。
また、撚られた導体の周囲も均一な円形にならないため、ここでもすき間が生じる。結果、すき間を埋めるために被覆の樹脂量が増え、軽量化を妨げていたのだ。
しかし、このISO規格の圧縮導体を使えば一気に問題は解決する。
「導体を圧縮することにより、断面積を保ったまますき間をなくすことができる。つまり、性能を維持しながら細径・軽量化が可能になったのです。この技術なくして今回のハロゲンフリー電線はあり得ませんでした」(井上)
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