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Researcher Clip - oct 04,2007 環境にやさしく小型・高効率な素子作製を新素材の実現に挑む 半導体技術研究所基板技術研究部次世代材料グループ 所属 水原 奈保

半導体技術研究所基板技術研究部次世代材料グループ 所属 水原 奈保 イメージ

2004年入社。研究分野はⅢ族窒化物半導体の結晶成長。特に窒化アルミニウム(AlN)を取り扱う。2007年3月には「Growth of high-quality 1-inch diameter AlN single crystal by sublimation」と題した論文を執筆。物理科学専攻。

01 研究内容 02 住友電工だからできること

研究内容

AlNを用い、サイズと品質が両立した結晶生成を目指す
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 Blu-ray DiscやHD-DVDなど、次世代大容量光ディスクが実用化され、普及が進みつつあります。これらの技術には従来の赤色レーザよりも波長の短い青紫色レーザが用いられており、そこには、青色発光素子用半導体が活用されています。住友電工でも早くから青色発光素子用半導体の技術開発に取り組み、製品化を達成してきました。

 私たちが取り組むのは、この技術のさらに先を見据えた、深紫外発光素子用の半導体に活用する材料開発です。実現すればBlu-ray Discよりも大容量の記録用半導体レーザや装置が可能になるほか、水銀ランプの代替品となるため、環境にやさしく小型で高効率な素子作製が可能になると考えられています。

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 取り扱うのは、バンドギャップの大きさや高い熱伝導性などから下地基板に最適な材料として期待を集めているAlN。ただ、半導体を製品化するためにクリアすべき、大口径・高品質というハードルに対し、AlNは多くの課題を持ちます。というのも、高融点材料であることから、大口径化と高品質化を目指しやすい融液法が用いられないからです。そこで、昇華法を用いて研究開発を進めています。

2000度を超す高温との戦いの末、大口径で低欠陥の単結晶を実現
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 昇華法の中でも、下地基板を用いない自発核生成による方法ならば、AlNでも高品質な単結晶が得られやすいことがわかっていました。しかし、この方法だけでは大口径化が難しく、目標の達成に時間がかかると考えられました。そこで、品質の向上が難しいものの、大口径化が比較的容易な炭化ケイ素(SiC)基板上へのAlN成長に取り組むことにしました。

 開発にあたって最大の課題となったのは、高温条件下で安定して大口径の結晶を成長させることです。従来の融液法で作製される材料の場合、その温度は千数百度。それに対して昇華法によるAlN単結晶の生成は、2000度を超えます。過酷な条件下で欠陥を生じさせないため、事前にシミュレーションを行ったうえで実験を行い、その結果を次のシミュレーションと実験に反映するという作業を幾度となく繰り返しました。また、シミュレーションを活用することで使用部材の容器内における配置にも工夫を凝らすことができました。

 そうすることで得られた大口径のAlN単結晶は、厚さ3μm∼4mm。期待通り、全面に均一な結晶の成長を確認することができました。欠陥を示す転位密度も低減でき、一般的なレーザ用途などに使用される基板としての水準を満たすことができました。

住友電工だからできること

昇華法に関する豊富な経験が社内に蓄積
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 今回の研究開発にあたって大きな力となったのが、社内に蓄積されたGaAsやGaNといった気相法による「単結晶成長」に関するノウハウです。扱う素材や用いる手法が異なっても、「気相法」というテーマであれば、周囲には助言をしてくれる人がいくらでもいました。また、「化合物半導体」というテーマでも同様です。そして心強かったのが、私のような若手技術者に対する温かく、熱心な姿勢です。私がアドバイスを求めると、たとえ自分の研究対象外でも似た事例などの経験を惜しみなく語ってくれ、一緒になって解決策を考えてくれました。きっと、先輩たちもかつて同じように助言を受け、技術を磨いてきたのだと思います。そんな歴史が繰り返され、技術が継承されているからこそ、今回の成功があったのではないでしょうか。

 現在、AlN単結晶技術開発は、海外企業を中心にしのぎを削っています。当面の目標は、これらの海外企業に負けない技術開発と、より優れた特性を有する結晶の開発。そしていち早くエピレディの大口径ウエハの製品化を達成したいと思っています。

専門用語紹介

▼ バンドギャップ
半導体や絶縁体のバンド構造における、電子に占有されたエネルギーバンド(価電子帯)の最高点から電子が空のエネルギーバンド(伝導帯)の最低点までの間のエネルギーの差

▼ バンド構造
結晶などの固体の中で波として振舞う電子(価電子)が取ることのできるエネルギーと波数との関係を示した曲線のこと

▼ 融液法
溶けた物質(融液)の凝固作用を利用した結晶成長方法。シリコン(Si)などの結晶成長で用いられ、大口径かつ高品質な単結晶が得られやすい

▼ 昇華法
成長容器(るつぼ)内に入れた原料物質を加熱し、昇華した気体が低温部に移動した後、低温部で再結晶化し、結晶が成長する方法

▼ 気相法
気相成長法。気体の状態から結晶成長する手法の総称。その過程で化学反応を用いる化学気相法(CVD)、物理反応を用いる物理気相法(PVD)などがある

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