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Researcher Clip - aug 22,2007 切削工具の長寿命化を実現する新たなコーティング技術を製品化 住友電工ハードメタル株式会社 材料開発部合金開発グループ 主席 福井治世

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1991年入社。半導体事業部に在籍した後、93年よりセラミックコーティング技術開発に取り組む。2000年より、対象を切削工具に絞って研究開発に従事。「スーパーZXコート」では、開発から製造への移管まで一貫して携わる。工学研究科応用物理学専攻。

01 研究内容 02 住友電工だからできること

研究内容

金属加工における留まることのない課題へ挑戦
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 金属を切る、削る、穴を開けるといった加工技術は、モノづくりの根幹を支えるものです。この分野においても「より速く、より低コストで」というニーズは高まる一方で、さらに近年は、被削材(ワーク)の鉛レス化や切削油を用いないドライ加工といった、環境へ配慮した加工技術への期待が高まっています。これらはすべて、切削工具にとってはより過酷な条件が求められていることを意味します。事実、加工速度も上昇、新素材など被削材の難削化も進んでおり、加工時の刃先温度は1000度を超えるケースも出てきています。

 これらの条件下においても欠損や酸化が起こりにくく、耐摩耗性にも優れた工具を作ることが私たちの使命です。中でも私は、超硬合金でできた工具の表面にコーティングして物性を向上させるという側面から、工具の長寿命化に取り組んでいます。

 段取りのよさが仕事の成否を分けるとも言われる金属加工の世界において、工具の長寿命化は工具交換回数の削減と直結し、納期の短縮化を大きく左右します。それだけにユーザーからの期待は非常に大きい。そんな、モノ作りのカギを握る技術でもあるのです。

AlCrN膜とTiAlN膜をナノレベルで1000層積層させた「スーパーZXコート」
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 開発にあたってまず着目したのが、耐酸化性と耐摩耗性に優れるAlCrN膜です。ところがAlCrN膜だけではコーティングがはがれやすいという問題がありました。そこで、密着性と膜強度に優れた特性を持つTiAlN膜との組み合わせを考えたのです。具体的には、それぞれの素材を5nmごとに交互に積み重ね、合計1000層にもわたる超多層構造を開発しました。これにより、ユーザーが実際に使用する際に問題となりやすい、膜ピッチングが原因となる刃先の欠損を大幅に低減し、刃先の信頼性を高めることができたのです。

 また、あらゆる加工条件でユーザーの期待を上回る性能を発揮できる商品とすることも大きな課題でした。というのも、ワークには鋳鉄や鋼からステンレス鋼まで、さまざまな種類があります。加工環境も、機械のセッティングが完全に調整された状態もあれば、振動など、外部条件の影響を受けやすい不安定な環境の場合もあります。研究室レベルではうかがい知れない使用環境に思いをはせ、テストを重ねることで研究結果を製品へと落とし込んでいきました。

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 こうして製品化された「スーパーZXコート」は、従来コートよりも40%高い硬度を有しています。また、膜の酸化が始まる温度も、約200度引き上げ1000度を超すことができました。そして、より強固な密着性も備わりました。これらの結果、工具の寿命は2倍に、そしてより高速で高能率な加工ができるようになったのです。

住友電工だからできること

狙い通りの開発ができるのは高度な分析技術があるからこそ
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 私が取り組むPVDというコーティング方法は、一般的に、膜の中に圧縮残留応力が付与され、切削性能に影響を与えるという性質を持ちます。これを克服するには、コーティング膜のナノレベルの微細構造や数μmという非常に薄い膜中の残留応力を把握しながら開発を進める必要がありました。そこで力を発揮してくれたのが、解析技術研究センターの協力により実現した、放射光施設SPring-8を用いた最先端の応力分析です。コーティングの表面から母材との界面まで、わずか数μmの世界を克明に描き出してくれたSPring-8は、机上の理論を実際の技術へと高めてくれるために不可欠なものでした。これがあったからこそ、膜強度を狙い通りに高めることができました。

 分析技術は、私たち開発者の理論や狙いを客観的に「見えるカタチ」にしてくれます。そこからは、問題点や改善への足がかりなど、さまざまなヒントを得ることができます。高度な分析技術に支えられているからこそ、住友電工は時代を先取る技術や製品を生み出せてきたように思います。

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 モノ作りがある限り、切削加工はなくならないと思います。そして、技術革新は続くと思います。次の時代が求める工具を生み出し、モノ作り、ひいては社会へより一層の貢献をしていくことが今の目標です。また、私たちが先輩から受け継いだ技術を次世代へと引継ぎ、社会への貢献を絶え間なく続けていきたいと思っています。

専門用語紹介

▼ AlCrN
アルミクロムナイトライド(窒化アルミクロム)

▼ TiAlN
チタンアルミナイトライド(窒化チタンアルミ)

▼ PVD
Physical Vapor Deposition、物理的蒸着法。物質の表面に薄膜を形成する蒸着法のひとつで、気相中で物質の表面に物理的手法により目的とする物質の薄膜を堆積する方法。

▼ SPring-8
Super Photon ring 8GeV、世界最高性能の放射光利用施設。従来の放射光施設以上に強いX線を平行に照射することができるため、物質の種類や構造、性質を詳しく知ることができる。

「スーパーZXコート」は住友電工ハードメタル株式会社の登録商標です。
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