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Researcher Clip No,07

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Researcher Clip - dec 12,2006 高速・高出力で駆動するモータを根底で支える圧粉磁心の高特性化を追究 エレクトロニクス・材料研究所 アドバンストマテリアル研究部所属 前田 徹

エレクトロニクス・材料研究所 アドバンストマテリアル研究部所属 前田 徹 イメージ

研究開発本部エレクトロニクス・材料研究所アドバンストマテリアル研究部所属。大学院で材料物性学を専攻し、ギガヘルツ電磁波の吸収材料開発に取り組む。2003年に入社してからは、現在にいたるまで圧粉磁心材料の開発に従事。工学博士。

01 研究内容 02 住友電工だからできること

研究内容

モータの性能向上のカギを握る圧粉磁心
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 材料開発に携わる私が取り組むのは、モータや変圧器に使われる鉄心材料の一種である、圧粉磁心です。現在、多くのパワーデバイスは駆動周波数が数100Hz以下で駆動しています。しかし、パワーデバイスに対する高速かつ高出力の駆動へのシフトへのニーズの高まりは確実視されています。具体的には、1kHz付近の高周波帯域で駆動するパワーデバイスです。この際、従来の鉄心材料である積層鋼板にとって替わる材料として注目されているのが、圧粉磁心なのです。この周波帯域では、積層鋼板はエネルギー損失(鉄損)を抑えるためには非常に薄い鋼板を積層しなくてはならず、コスト高になってしまいますからね。これに対して、圧粉磁心は鉄の粉末を焼き固めて成形するため、形状の自由度が高い。そのため、自動車に搭載するモータのように、小型化へのニーズに応えやすいという強みも持っています。

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 しかし圧粉磁心には課題もあります。それは、現状の多くのパワーデバイスの動作条件である低周波帯域における電磁変換時の鉄損が大きく、開発当初の材料では積層鋼板に対するメリットに欠けてしまうのです。高周波帯域に強いという既存のメリットに加え、低周波帯域でも鉄損を減らすことができれば、形状の自由さという優位性を武器に、全方位において積層鋼板にとって替わることができる—。それが、圧粉磁心を高特性化する狙いなのです。

絶縁コーティング膜の開発によりエネルギー損失を3分の1に低減

 圧粉磁心の鉄損低減に向けては、材料である鉄粉をどのように加工するかがポイントでした。鉄粉は、加工過程で歪みが生まれてしまうので、これを熱処理によって除去します。除去の際には処理温度が高いほど有効なのですが、そうすると今度は、鉄粉の表面に不可欠な100ナノメートルレベルの絶縁膜が劣化してしまう。つまり、絶縁膜の耐熱性を向上させるという課題が持ち上がりました。

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 この課題を解決するために採用したのが、リン酸ガラス絶縁被膜上にバインダ樹脂湿式コーティングを行うという、多層構造にすることです。この方法では、第1層の厚みは20〜30ナノメートル、第2層は100〜150ナノメートルで、鉄粉表面に均一な2層被膜を得ることができます。しかも、耐熱温度は従来品が673Kであったことに対し、823Kと約150Kの上昇を可能にしました。この結果、磁束密度1T、周波数1000Hzという条件下でも、鉄損を3分の1に低減することができたのです。これは、ターゲットとする積層鋼板の変換損失と遜色のないレベルのものです。

住友電工だからできること

製造や市場の視点を持ちながら研究開発に取り組める
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 研究開発に取り組む者が陥りがちなこととして、自身の研究テーマ内に閉じこもってしまうことが挙げられると思います。ところが住友電工では、他の研究チームや事業部門との連携が非常に緊密です。例えば私が担当するパワーデバイスの場合、巻き線を研究するチームや、製品全体としての設計を研究するチームとの協力がごく自然な形で行える。壁にぶつかったときなども、他チームと相談することで、思わぬヒントや解決策を見つけ出せることがあるのです。さらに、市場の動向や顧客の要望および、量産性やコストといった、商品として世に出るときの状態を意識しながら研究を進めることができます。研究者でありながら、最終商品を明確に視野に入れる「ものづくり」を実践できることは、この会社ならではの強みです。

 現在、高特性化した圧粉磁心を、安定した品質で量産するための改良に取り組んでいます。高出力かつ小型・軽量化されたパワーデバイスに対するニーズは高まる一方です。一刻も早く、世の中の期待に応えられる製品を生み出し、社会に貢献していきたいと思っています。

専門用語紹介

▼ 圧粉磁心
磁性粉末を個々に絶縁し、それを加圧成形した材料。高周波帯域で良好な電磁変換特性を示す、成形の自由度が高く小型化が容易といったメリットを持つ。また、モーターなどの製品を廃棄する際には材料の分離が容易なため、リサイクルに適しているという特徴もある

▼ 積層鋼板
モータなどのコア(鉄心)を作る際に用いる、磁気的な方向性を持った電磁鋼板(Fe-Si)を積み重ねて作った材料

▼ 鉄損
電磁変換時に、熱や抵抗などとして失われるエネルギーのロス

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