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Researcher Clip No,06

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Researcher Clip - dec 18,2006 電力システムのコンパクト化・低コスト化を可能にする臨界電流200A級高温超電導線を開発 電力・エネルギー研究所 超電導開発室高温超電導線プロジェクト主席 綾井 直樹

電力・エネルギー研究所 超電導開発室高温超電導線プロジェクト主席 綾井 直樹 イメージ

電力・エネルギー研究所超電導開発室高温超電導線プロジェクト主席。1991年入社。入社以来一貫して超電導線の開発に携わり、1996年ごろよりビスマス系銅酸化物を用いた高温超電導線の開発に取り組む。本技術により、岩谷直治記念賞、電気科学技術奨励賞(オーム技術賞)などを受賞。

01 研究内容 02 住友電工だからできること

研究内容

日本発のビスマス系超電導技術を世界へ羽ばたかせる
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 物質を極限まで冷やしたとき、電気抵抗がなくなり、同じ断面積で銅の数百倍の電流を損失ゼロで流すことができる。超電導体は我々電線メーカーにとって究極の材料です。1986年にベドノルツとミューラーによって酸化物超電導体が発見され、世界中の物理・化学系の研究者を巻き込んだ一大ムーブメントが引き起こされましたが、私たちが注目したのがブームの最中1988年に日本で発見されたビスマス系銅酸化物です。これまでに実用化されていた金属系超電導体は高価な液体ヘリウムを使って-269℃まで冷やして使われていましたが、ビスマス系酸化物は液体窒素温度よりも30℃以上高い-163℃で超電導状態となるため、発見直後から幅広い応用が期待できる材料として注目されていました。しかし、実用化には10年以上の歳月がかかりました。それは、複雑で扱いにくい材料をいかに合成して、線材の形に仕上げ、性能を高めるかという課題への挑戦の年月でした。

臨界電流200A、長さ2000メートルの高温超電導線を量産化
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 開発当初は、わずか数Aの電流を流すと超電導状態が失われて抵抗が発生する特性の低いもので、長さも手のひらに載るほど短く、これが超電導線か?と訝しげに見られるようなものでした。それが2002年に液体窒素冷却で100A、2006年には200Aを達成し、2000メートルという長尺化にも成功しました。この過程では、超電導体の純度、密度、結晶配向、そして線材全体にしめる超電導体のボリュームの4点が改良ポイントとなりました。

 ビスマス系酸化物超電導体はBi、Sr、Ca、Cu、Oという5つの元素が非常に複雑な構造をなすセラミックスで、限られた温度でしか化学的に安定しない、たいへん合成の難しい材料です。当初発見された材料も純度が低く、特性が低い不純物が混ざったものでしたが、微量のPbを添加し、微細粉末原料の加工・合成条件を極めることで純度の高いものが得られるようになりました。密度は、途中で圧縮加工を入れて2度にわたって焼結を行うという方法を開発し、密度90%の緻密な組織を作り上げました。

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 これらの成果によって、ゼロ抵抗状態で流すことができる最大の電流値である臨界電流の高い材料を得られるようになってきたのですが、線材として様々な形状のコイルやケーブルに利用するには、フレキシブルで長いものにすることが不可欠です。硬くて脆いセラミックスをどうすれば、柔らかくて長い線にできるか。このときに採用したのが、セラミックスを非常に細いフィラメントにし、銀の中に多数埋め込んだ多芯構造という方法です。これにより、1000メートルを超える長い線材化に成功しました。さらに加工プロセスを改良して、銀の量を減らし、長さと柔らかさを維持しながら超電導体の比率を上げていきました。これらの工夫の結果、2002年には断面積が1平方ミリという細い線材で臨界電流100Aを液体窒素冷却で達成しました。この電流密度は銅線の100倍に相当する高い特性です。

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 実用化に向けた大きな山となったのが、バルーニングと呼ばれる欠陥の問題でした。これは超電導体内部の小さな隙間に侵入した液体窒素が、室温に戻されたときにガス化し、線材を膨れ上がらせる現象です。セラミックスであるがゆえの宿命とも言えるこの現象には、300気圧の高圧下で最終焼成を行い密度が100%の焼結体とする技術を開発して対処しました。この高圧焼結技術によって臨界電流はさらに向上し、2006年、工業的に長尺線材の量産が可能な製法を用いながら、201Aを達成したのです。

住友電工だからできること

材料加工、線材加工のノウハウが社内にあふれている
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 ビスマス系高温超電導線は、私たち超電導グループが開発した製品ですが、そこに使われた技術は、住友電工が、長い歴史の中で培ってきたノウハウが活かされています。例えば、セラミックスの原料である微細な粉末を加工して焼き固めるという方法は、工具や電子部品に用いられる超硬合金や焼結製品で培われた技術があります。線材を加工する技術は、電線メーカーとして創業以来の歴史があります。セラミックスを細いファイバー状にしてフレキシブルな線材にするというアイデアは、既に光ファイバーで実現されていました。様々な材料の設計、加工に関するノウハウ、それをサポートする国内最高レベルの分析技術、生産技術の統合力が住友電工の強みであると考えています。ビスマス系超電導線は、まさにそのような当社の特長によって生まれた製品です。

 現在の目標は、記念すべき超電導発見100周年である2011年までに臨界電流300Aを達成することです。超電導モータやリニア新幹線の実用化による輸送革命、発電への応用による脱石油社会の実現、そして地球温暖化対策など、超電導は社会に大きな貢献を果たす可能性を秘めています。社会に貢献する基盤技術となる日を目差して、さらに研究を進めていきたいです。

専門用語紹介

▼ ビスマス系銅酸化物
1988年、科学技術庁金属材料研究所の前田弘博士らが発表。Bi(ビスマス)-Sr(ストロンチウム)-Ca(カルシウム)-Cu(銅)-O(酸素)で構成されており、特に、Bi、Sr、Ca、Cuの組成比が2:2:2:3となる2223相が超電導体としての特性が高い

▼ 高温超電導
物質が超電導性を示すようになる移転温度(臨界温度)が高いこと。JIS規格では25Kを越えるものと規定しているが、一般的には77Kを越える一連の銅酸化物高温超電導体を指すことが多い

▼ DI-BSCCO
革新的ビスマス系超電導線

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