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Researcher Clip No,04

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Researcher Clip - dec 12,2006 次世代光ディスクを実現する高品質・大口径の青紫色レーザ用窒化ガリウム基板を世界で初めて開発 半導体技術研究所 基板技術研究部主査 弘田 龍

半導体技術研究所 基板技術研究部主査 弘田 龍 イメージ

半導体技術研究所基板技術研究部主査。1995年入社。入社以来、青色発光素子用の新たな化合物半導体の開発に携わる。セレン化亜鉛(ZnSe)の結晶開発を経て、1999年より青紫色レーザ用窒化ガリウム(GaN)基板の開発を担当し、2006年には研究開発部門賞の銀賞を受賞。物性学専攻。

01 研究内容 02 住友電工だからできること

研究内容

30年来求められていた高品質・大口径のGaN基板作製へ挑戦
▲ 青紫色レーザ用窒化ガリウム(GaN)基板

 半導体には、シリコンなど単元素の半導体と、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウムリン(InP)など、化合物半導体があります。私たちの研究所では、このうち、化合物半導体全般の開発を行っています。特に私が担当する分野で目標としているのは、Blu-ray DiscやHD DVDといった、次世代光ディスクに使用されるレーザ用の半導体基板を開発すること。地上波・衛星デジタル放送のHDTV(ハイビジョン)を長時間録画・再生するために不可欠な次世代光ディスクには、従来機器で用いていた赤色レーザよりも波長の短い青紫色レーザが必要となるからです。

半導体技術研究所 基板技術研究部主査 弘田 龍 イメージ01

 その中で私は、入社以来、青色発光素子用の新規半導体開発に携わってきました。最初に取り組んだのは、ZnSeの結晶開発。高出力のレーザ作製を目的とした開発だったのですが、約4年の研究の結果、目標の達成は困難と判断。捲土重来を期して次に取り組んだのが、現在へとつながるGaNです。実はGaNは、青色発光素子の材料として30年ほど前から注目されていました。実際、GaN系の青色LEDのように、低出力の発光素子であれば耐久性などの問題もクリアし、実用化されていました。しかし、次世代光ディスクに用いる青紫色レーザは、高出力かつ長寿命のものが求められる。そのためには、従来の青色LEDのように、異種材料であるサファイアなどの基板の上に、GaN系の発光層を成長させる方法では、限界に来ていました。発光層と同種材料である、高品質・大口径のGaN基板が強く求められたのです。

原子レベルの欠陥を1000分の1にまで低減し、量産化に成功

 高品質のGaN基板の作製が困難だった理由は、GaN結晶の成長過程で、多くの転位(欠陥)が発生したからです。また、転位を抑えるための別の方法を採用すると、結晶の成長速度が遅く、量産性に劣るという問題を抱えていました。つまり、私たちの研究は、転位を抑えつつ結晶の成長速度を上げるという、相反するテーマへの挑戦だったのです。

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 この過程は、まさに試行錯誤の繰り返しでした。GaN基板の開発は1995年から開始され、高速成長によって2000年に世界初の直径2インチという、大口径のGaN基板の開発に成功していましたが、転位の低減は不十分で、レーザ用基板としては認められていませんでした。ときには結晶成長を中断して成長途中の結晶を評価したり、炉の中の状況を徹底的に調べるなど、文字通り汗にまみれた研究を行いました。こうした取り組みの結果、GaN系のLEDなどに使われた技術とは抜本的に異なる、転位密度を当初の100分の1〜1000分の1にまで激減させる結晶成長技術を開発でき、高品質・大口径基板の量産に成功しました。2003年のことでした。

住友電工だからできること

現場に潜む「サイエンス」を重視する気質がいぶし銀の輝きを放つ
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 研究段階での低転位化成功から、品質・歩留を向上させつつ量産化を目指すという過程では、社内に事業部門や設備部門といった、製品が生み出されてユーザに届くまでを担当する全部署が備わっていることが大きな力になりました。研究開発では、眼前の現象や自身の目標にとらわれ、ときに独り善がりになってしまいます。しかし、事業部門と密度の濃いコミュニケーションを容易に図れたため、下工程や顧客の要望をくみ取り、それに応えるためのスペックを考え抜くことができました。また、結晶の開発者である私自身が主体的に設備の開発に携れたことも重要な成功要因です。このプロセスでは、設備部門は強力に私をサポートしてくれました。そして、事業部門は顧客の要望という観点から、絶えず改善・改良を推し進めてくれました。これが、品質・コスト・生産量のあらゆる点で優位性の高い製品を生み出せた原動力となっています。

 住友電工は、材料技術に強い会社であると自負しておりますし、社外からもそのような評価をいただいております。実際、GaAsやInPで蓄積されてきた世界をリードする化合物半導体の開発ノウハウが、GaNへも余すところなく受け継がれました。また、社内には、材料技術に関する「生き字引」とも言えるベテラン技術者が数多くいます。GaN基板の開発においても、要所で貴重なバックアップをもらえました。これがなければ、本プロジェクトの成功はなし得なかったでしょう。

半導体技術研究所 基板技術研究部主査 弘田 龍 イメージ04

 先輩方から教えられ、私自身も深く胸に刻み込んでいるのが、「現場にこそサイエンスがある」ということ。ものづくりの現場では、研究室では考えられないような不測の事態が起こります。目で見て確認できないもの、簡単には説明のつかない現象など、想定外の事態だらけです。しかし、それらこそをサイエンスととらえ、泥臭い努力を積み重ねながら解を導き出していく。「いぶし銀」とも言えるそんな姿勢が、世界的な成果へとつながっているのです。

専門用語紹介

▼ Blu-ray Disc、HD DVD
次世代大容量光ディスク機器の規格

▼ LED
Light Emitting Diodeの略 ディスプレイなどに用いられる半導体発光素子

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